マイクロスコープを使った歯科治療のメリットデメリット!根管治療に必要

マイクロスコープは、歯科治療の精度を向上させるために使用される機器です。
特に根管治療においては、肉眼では見えない細かな部分まで確認できるため、感染部分の除去を正確に行いやすくなります。その結果、治療の成功率が向上し、再発リスクを抑える効果が期待できます。
一方で、マイクロスコープを導入している歯科医院は限られており、治療費が自費診療となる場合が多い点が懸念される要素のひとつです。
この記事では、マイクロスコープの基本的な役割や根管治療との関係に加え、メリット・デメリットについて詳しく紹介します。マイクロスコープを使った治療を検討している方は、ぜひ参考になさってください。
歯科で使うマイクロスコープとは
マイクロスコープは、歯科治療において患部を拡大して観察するための顕微鏡です。特に根管治療などの精密な処置に適しており、肉眼では確認が難しい微細な部分まで詳細に把握できます。
ここでは、マイクロスコープが根管治療に与える影響や、具体的なメリットについて紹介します。
根管治療に役立つマイクロスコープ
マイクロスコープは、根管治療の精度を向上させるために活用される機器です。
根管は非常に細く、分岐も多いため、肉眼だけでは全体の構造を把握するのが難しくなります。細菌感染を起こした歯髄を適切に取り除くには、拡大視野での治療が欠かせません。マイクロスコープを使用することで、根管の奥深くまで確認しながら処置を進められます。
また、細菌の取り残しを防ぎやすく、再発リスクを抑えられる点も特徴です。
同時に、治療の過程を映像として記録して患者さんに視覚的に説明できるため、治療の透明性や理解度も高められるでしょう。
目では見えない部分まで精密に観察できる
マイクロスコープは高倍率で患部を拡大し、肉眼では確認できない歯の内部や細かいヒビ、虫歯の進行具合を詳細に観察することが可能です。
根管治療で重要な根の内部は、複雑な形状をしているため、高倍率で細部までしっかりと確認しながら処置を進められる点は大きな助けになります。
また、歯を削る範囲を最小限に抑えやすくなり、健康な歯質をできるだけ残した治療を選択しやすくなる点も見逃せません。
拡大視野で治療を行うことで、見落としを防ぎ、精度の高い処置が可能になります。
精密な治療で患部の再発を防ぎやすい
根管治療では、感染部分を取り除き、再発しないように徹底した消毒が必要ですが、肉眼のみでの処置では細菌の取り残しが起こる可能性があります。
マイクロスコープを使用することにより、患部を拡大しながら治療を行えるため、感染組織の除去をより正確に行いやすくなります。
その結果、根管内に細菌が残るリスクが軽減され、再発を防ぎやすくなる点は、患者さんにとってメリットです。
また、治療の精度が向上することで、根管充填の精密度も高まり、細菌の侵入を抑える効果も期待できます。
治療後の腫れ・痛みを軽減しやすい
マイクロスコープを用いた治療は、細部まで視認しながら行えるため、不要な組織の削除を少なく抑えられます。
これにより、患部へのダメージが少なくなり、治療後の腫れや痛みが軽減されやすくなるでしょう。
正確な処置によって炎症が抑えられるため、治療後の回復もスムーズです。
さらに、根管治療においては、細菌の取り残しが炎症を引き起こす原因となるため、マイクロスコープによる精密な治療が、痛みの軽減にもつながると考えられます。
マイクロスコープのメリット
マイクロスコープを活用することで、いくつものメリットが生まれ、歯科治療の精度が向上し、よりよい治療を進めやすくなります。
ここでは、マイクロスコープの具体的なメリットについて紹介します。
根管治療の成功率を高める
マイクロスコープを使用することで、根管治療の成功率を向上させやすくなります。具体的には以下のような効果が代表的です。
- 肉眼では見えにくい複雑な部分も確認できる
- 細菌感染した組織も精密除去できる
- 治療後の再発リスクを軽減しやすい
根管は複雑な構造をしており、肉眼での確認には限界があります。しかしマイクロスコープを使用した治療では、根管の形状や内部の状態を正確に把握できるため、より精密な作業が可能です。
歯への負担を減らした治療が可能
マイクロスコープを使用すると、健康な歯質をできるだけ残しながら治療を行いやすくなります。
- 視野を拡大することで削る範囲を少なく抑えられる
- 歯への負担を減らすことができる
従来の肉眼による治療では、見えにくい部分を安全に処置するために、健康な歯の一部も削る場合がありました。しかし、マイクロスコープを用いることで、必要最小限の処置にとどめやすくなります。
過度な削除を防ぐことは、歯の寿命を延ばすことにもつながります。
特に、歯の神経を残せる可能性が高まるため、将来的な抜歯リスクを軽減しやすい点にも注目です。
精密な処置によって治療の負担を抑え、歯を守るための手段としても、マイクロスコープは有効な治療手段だといえるでしょう。
動画撮影ができる
マイクロスコープには、治療中の映像を記録できる機能が備わっているものもあります。
記録した動画を患者さんと共有することで、患者さんの疑問や不安を解決しながら治療を進めやすくなるでしょう。
また、治療のビフォーアフターを比較することで、治療の結果や成果をより明確に把握できます。
動画を活用することで、患者さん自身が口腔内の状態を理解しやすくなる点もメリットです。
歯科治療は、肉眼で見えない部分の処置が多いため、「どんな治療をしているのだろう」と疑問を持つ患者さんもいるでしょう。
マイクロスコープの映像を通じて治療の内容を説明することで、納得感を持って治療を受けやすくなります。
歯の温存治療ができる可能性を高める
歯の保存を優先した治療が行いやすくなるのも、マイクロスコープのメリットです。
例えば根管治療では、従来の方法よりも精密な処置が可能になるため、抜歯を回避できるケースが増えます。
また、虫歯の進行度合いや歯の内部の状態を詳しく確認でき、重度でも『神経を残すか残さないか』などの大切な選択をより正確に検討しやすくなるでしょう。
歯周病の治療においても、歯茎や歯槽骨の状態を細かく観察できるため、できるだけ歯を残す治療計画を立てやすくなります。
このような精密な処置や判断が可能になることで、将来的な抜歯リスクを減らし、より長く自身の歯を維持できる可能性が高まるでしょう。
マイクロスコープのデメリット
マイクロスコープは歯科治療の精度を向上させる有用な機器ですが、いくつかのデメリットもあります。
ここでは、マイクロスコープを用いた治療における主なデメリットについて紹介します。
基本的に自費診療になる
マイクロスコープを使用した治療は、基本的に自費診療となるケースがほとんどです。
細部まで確認しながら精密な処置を行うため、技術的な負担が大きく、保険適用外となることが一般的です。
しかし、すべての治療が自費診療になるわけではなく、『歯根端切除術』や『大臼歯の根管治療』に限っては保険適用となる場合があります。
歯根端切除術は、根管治療を行った歯で炎症が再発した際に、感染した歯根の先端を切除する外科的処置です。
大臼歯の根管治療では根管の形状が複雑なため、マイクロスコープを使用することで成功率を向上させやすくなります。
このような治療に該当する場合は、保険適用の範囲内で治療を受けられる可能性があるため、事前に歯科医院へ確認するとよいでしょう。
治療時間が長い
マイクロスコープを使用した治療は、従来の治療に比べて時間がかかる傾向があります。
高倍率で患部を拡大しながら慎重に処置を進める必要があるため、治療の精度は向上しますが、施術時間が長くなりやすい点がデメリットです。
特に、根管治療や歯の温存を目的とした処置では、歯の内部を細かく確認しながら治療を進めるため、一回あたりの治療時間が予想よりも長くなることがあります。精密な処置を要するため、治療回数が増える可能性もあるでしょう。
マイクロスコープを使った治療を行う際には、事前に歯科医師と相談し、生活や仕事・学業などに悪影響が出ない治療スケジュールを立てましょう。
取り扱っている歯科が少ない
マイクロスコープは、一般的な歯科医院にはまだ広く普及しているわけではありません。それには以下のような理由があります。
- 導入に高額な費用がかかる
- 扱うためには高度な技術が必要
このような事情があり、すべての歯科医院で対応しているわけではないのが現状です。
そのため、マイクロスコープを活用した治療を希望する場合は、設備が整っている歯科医院を探す必要があります。
また、マイクロスコープを用いた治療は歯科医師の習熟度も成功率に関わります。十分な経験を持つ医師を選ぶことも重要になるでしょう。
導入している歯科医院であっても、使用頻度や技術レベルには差があります。診察の際に「マイクロスコープ技術の高い医師に治療してほしい」と相談してみるのもおすすめです。
根管治療とは
ここまでで「そもそも根管治療って何だろう」と思った人もいるかもしれません。
ここでは、根管治療の概要や、根管治療が望ましいケースなどについて紹介します。
根管治療の概要
根管治療は、歯の内部にある神経(歯髄)が炎症を起こした場合に行う治療です。根管内の感染組織を取り除き、洗浄・消毒して密封する処置を行います。
炎症が進行すると強い痛みを伴ったり、細菌感染が広がって歯の根の周囲に膿が溜まったりすることがありますが、放置すると最終的には抜歯が必要になってしまいかねません。
そのような結果にならないよう、根管治療で対応します。適切な治療を行うことで、抜歯を回避し、歯の機能を維持しやすくなります。
治療の流れとしては、まず神経が炎症を起こしている部分を除去し、根管内を清掃した後、薬剤を充填して封鎖します。
治療は根管の形状や感染の広がり具合に応じて複数回の処置が必要になることがあるため、事前に治療計画を確認しておくとよいでしょう。
根管治療が必要になるケース
根管治療は、歯の神経(歯髄)が炎症や感染を起こした際に行う処置です。例えば、以下のような症状に適しています。
- 歯の神経に達するほど深い虫歯がある
- 強い衝撃で歯が折れてしまった
- 過去に神経を抜いた歯がまた膿んできた など
炎症や感染が進行すると、強い痛みや腫れを伴うことがあり、放置すると歯の根の先に膿が溜まってしまい、さらに悪化する可能性があります。
そのような状態を防ぐため、根管治療を選択することはとても有効です。
根管治療を適切に行えば、抜歯を回避し、歯の機能を維持しやすくなります。
根管治療が必要かどうかは歯科医の診断が重要になるため、上記の症状に心当たりがあったり、そのほか口腔内の状態に違和感があったりする場合には、かかりつけの歯科医院で相談してみることをおすすめします。
マイクロスコープの活用で根管治療の精度が高まる
マイクロスコープを活用すれば、拡大視野で内部の状態を把握できるため、細菌感染を起こした組織を取り残さず除去しやすくなり、根管治療の精度向上につながります。
また、根管の分岐やヒビなど、見落としやすい問題を正確に診断しやすくなる点も、マイクロスコープならではの利点です。
根管治療の成功率を高め、歯をより長く保存するために、マイクロスコープの活用は有効な手段といえるでしょう。
まとめ
マイクロスコープは根管治療の精度を高める優れた機器で、肉眼では確認しにくい・作業しにくい根管でも、精密な確認や治療が可能になります。
従来の治療よりも歯への負担が少なく、温存しやすいことや、動画撮影で患者さんと共有しやすいことなどのメリットがあります。
一方、保険適用になる治療範囲が狭いため、費用面の問題があったり、精密な治療ゆえに治療時間が長くなりやすいという点がデメリットです。
しかし、再治療率を下げられることや、患者さんの負担を軽減しやすいという点に注目すると優れた治療法であり、歯の健康を第一に考えれば、選択する価値の大きい方法といえます。
福山デンタルクリニックではマイクロスコープを導入し、習熟した歯科医師による治療を提供しています。より精度の高い根管治療をご希望の方は、ぜひご相談ください。