難治性根尖性歯周炎に対する高周波電流の有効性に関する後ろ向き観察研究
今回は北海道大学と開業医H歯科医院の共同研究の論文です。
研究の概要
2010年から2021年までに根尖性歯周炎と診断された患者のうち、従来の治療法では改善しなかった難治症例と、根の先に器具が届かない穿通不可症例に対して、**高周波電流(HFC:High Frequency Conduction)**を応用した治療が行われました。
このHFCとは、微弱な高周波電流を根管内に流し、目に見えない細菌や炎症の除去・抑制を図る治療法です。
治療後の経過を追跡した結果、以下のような顕著な差が出ました:
難治症例の成功率(1年6か月後)
- HFC治療あり:66.7%
- 従来法のみ:4.3%
穿通不可症例の成功率(2年後)
- HFC治療あり:65.8%
- 従来法のみ:2.3%
これらのデータは**統計的にも有意(p<0.001)**であり、HFCが非常に高い効果を持つことが示されました。
統計解析による裏付け
治療効果をより正確に検証するために、傾向スコア・マッチングとロジスティック回帰分析が実施されました。その結果、
- 難治症例:HFC治療による成功のオッズ比は 39.00(95%信頼区間:4.18–364.00、p<0.01)
- 穿通不可症例:オッズ比は 66.50(95%信頼区間:8.15–542.00、p<0.001)
という、非常に高い効果が確認されました。
さらに、治療中および治療後にHFCによる有害事象は一例も報告されていないことから、安全性の面でも信頼性が高いと言えます。
まとめ
本研究は、従来の治療法では改善が難しい根尖性歯周炎に対し、高周波電流を応用することで高い治療効果が得られることを示しました。
特に、治療困難な症例に対して非侵襲的かつ安全にアプローチできる点は、今後の歯科医療において大きな意義を持ちます。将来的には、HFCがより一般的な治療オプションの一つとなる可能性があり、さらなる研究と臨床応用が期待されます。
論文の感想
この論文をよんで、また、この高周波治療のできる器械の紹介をみて、すぐに購入しました。モリタのRootZX3を。確かに効果があるな、と思える部分はあります。特に治りが早いという印象は受けます。通常だと3、4ヶ月はかかるであろうとおもう病変も、1、2ヶ月で小さくなっていることがあります。ただ、穿通していないケースに関してはまだ、それほどの効果がみられていません。この辺りは使い方をもっと勉強しなくてはいけないのかもしれません。また、、難症例を多く見る当院では内部で割れてしまっているのが多くあります。そういったケースに対してどの様な効果があるのか?こちらも注意深く見守っていきたいと思います。
ただ、少しでも可能性があるならどんどん使っていきます。
自分が治療された時の感想
実は、私も歯が悪くなってお世話になっている先生に見てもらいにいきました。そこで、この「高周波治療」をしてもらいました。先生が上手いのか、治療後はすごく良くなって、快適です。ただ、この高周波治療をした後は「焼ける様な痛み」がふと、やってきたりします。先生には言えませんでした。。。患者さんの気持ちもわかります。
