根管洗浄についての論文
こんにちは。根管の洗浄についての論文をご紹介します。根管洗浄とは根管内をファイルなどで形成して整えた後、もしくは同時に洗浄液で洗う工程のことを指します。その洗浄剤の役割は、感染源の除去と治療の成功に直結する重要な要素です。Matthias Zehnder博士のレビュー論文「Root Canal Irrigants」(Journal of Endodontics, 2006年5月号)では、根管内の微小環境と、それに適した洗浄剤の選定について詳述されています。

根管内の微小環境と洗浄剤の必要性
根管内は閉鎖された特殊な空間であり、中には歯髄をいう血管と神経の複合体が入っています。そこに感染が起きると壊死組織や細菌が蓄積します。これらを物理的な器具だけで完全に除去するのは難しく、化学的な洗浄剤の助けが必要となります。
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)の役割
本論文では、主たる洗浄剤として次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。これは、以下の理由によります:
- 幅広い抗菌スペクトルを持つ
- 壊死組織を溶解する能力がある
ただし、組織毒性や刺激性が高いため、使用濃度や洗浄時間には注意が必要です。
キレート剤の補助的使用
EDTAなどのキレート剤は、スミア層(機械的処置によって形成される有機・無機残渣の層)の除去に用いられます。これにより、薬剤の浸透性が高まり、充填材の接着性も向上します。
洗浄手順と技術的工夫
NaOClとEDTAは併用することで、根管内の清掃効果を最大限に引き出せます。ただし、同時混合は避け、交互に使用する必要があります。また、近年は超音波活性化や陰圧洗浄といった技術が洗浄効果を高める方法として注目されています。
まとめ
根管洗浄は、単なる洗い流しではなく、科学的根拠に基づいた重要な治療工程です。適切な薬剤選択と使用方法によって、治療の成功率を高めることができます。
感想
リクッチ先生のシステマティックレビューではもっと厳しいことが書かれてありました。洗浄液の濃度や薬剤についての統一見解はない。ただあるのはその量であるということです。確実なのは大量の洗浄液を使わないと効果が薄いということです。そして、もっとも大事なのは物理的に削ることだと私は思っています。