インプラントの寿命はどれくらい?長持ちさせるコツや再手術のタイミング

インプラントは天然歯に近い見た目と機能を持つ治療法ですが、永久に使えるわけではありません。寿命は適切なケアによって左右され、メンテナンス次第で長持ちさせることが可能です。
実際、インプラントの寿命はどれくらいなのでしょうか。また、寿命が近づくとどのような兆候が現れるのかが気になる方も多いでしょう。
この記事では、インプラントの平均寿命や交換が必要なサイン、再手術のタイミング、寿命を縮める原因や長持ちさせるためのポイントなどについて紹介します。
インプラントを快適に使い続けるための参考になさってください。
インプラントの平均寿命や寿命判断
インプラントは適切なメンテナンスを行えば、長期間使用できます。
ここでは、インプラントの平均寿命や、寿命かどうかを判断する注目ポイントについて紹介します。
インプラントの平均寿命
インプラントの寿命は個人の口腔環境やメンテナンスの状況によって異なりますが、一般的には10~15年とされており、適切なケアを行えば20年以上使用できるケースも見られます。
しかし、すべてのインプラントが長期間機能するわけではなく、メンテナンスが不十分だと平均寿命よりも早い段階で交換が必要になることもあります。
人工歯部分の摩耗や破損、インプラント体のぐらつきが見られた場合は、寿命が近づいている可能性があるため注意が必要です。
寿命が来たかどうかの判断ポイント
インプラントの寿命が近づくと、いくつかの兆候が現れることがあります。こうしたサインを見逃さず、早めに対処することが重要です。
次項から具体的な判断ポイントを見てみましょう。
人工歯の劣化
インプラントの上部構造である人工歯は、セラミックなどの素材で作られており、長期間の使用や強い力が加わると、欠けたり割れたりすることがあります。
特に、以下のような傾向がある人は注意が必要です。
- 噛む力が強い
- 歯ぎしりの癖がある
このような場合、人工歯の摩耗が早まることが少なくありません。このような劣化が見られた場合、修理や交換が必要となります。
土台にトラブルが起きている
インプラントの土台部分であるインプラント体に問題が生じることもあります。
例えば、インプラント周囲炎と呼ばれる感染症が発生すると、インプラントを支える骨が減少し、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまう恐れがあります。
このような症状は適切な口腔ケアで予防できるため、日常的なケアを怠らないようにしましょう。
こんな症状が出たら歯科医院へ
インプラントの寿命が近づくと、劣化を示す症状が現れることが多いです。以下のような症状が見られた場合は、早めに歯科医院を受診してみてください。
- 噛んだときに痛みや不快感がある
- インプラントの周囲が赤く腫れている
- インプラントがぐらついている
このようなサインを見逃さず、適切な対処を行うことで、インプラントの健康を維持し、長持ちさせやすくなります。
寿命が来たインプラントは交換が必要
インプラントは寿命が来ると口腔内に悪影響を及ぼすため、適切なタイミングで交換することが重要です。
ここでは、寿命を迎えたインプラントの交換が必要な理由について紹介します。
残った歯に悪影響が出る
インプラントが寿命を迎えると、周囲の歯や口腔環境に悪影響を及ぼすことがあります。
例えば、以下のような症状が代表的です。
- 噛み合わせのバランスが崩れる
- 隣接する歯に過度な負担がかかる
- インプラント周囲炎にかかりやすくなる恐れがある
寿命を迎えたインプラントを無理に使い続けると、ほかの歯への負担が大きくなり、健康な歯のすり減りを早めてしまうことがあります。
また、インプラントの状態が悪化すると清掃しにくくなり、プラークの蓄積などが進みやすくなるため、結果としてインプラント周囲炎を発症するリスクが高まります。
痛みを感じることがある
人工歯や接続部分の劣化により噛み合わせが悪くなると、噛む際に違和感や痛みが生じることがあります。
また、インプラントが緩んでくると、噛む力が均等に伝わらず、周囲の歯や顎に負担がかかるケースもあります。
こうした痛みや違和感が続く場合は、インプラントの交換や調整が必要になるため、早めに歯科医院で相談してみてください。
誤飲の危険がある
インプラントの寿命が来ると、人工歯やインプラントが脱落するリスクが高まります。食事中や睡眠中に脱落すると、誤って飲み込む危険性があるため注意が必要です。
誤飲したインプラントが気道に入ると、窒息などの重大な健康被害を引き起こす恐れがあり、危険です。
消化器官に入った場合でも、排出されるまでの間に不調を引き起こす可能性があります。
特に、高齢者や嚥下機能が低下している人はリスクが高いため、異常を感じたら早めに歯科医院で相談しましょう。
再治療が難しくなる可能性
寿命を迎えたインプラントをそのまま使用していると、再治療が難しくなる恐れがあります。顎の骨が減少し、新たなインプラントの埋入が難しくなることがあるため注意が必要です。
例えば、噛む力が偏ると骨に過度な負担がかかり、吸収が進む恐れがあります。骨量が不足すれば追加の処置が必要になり、治療期間が延びたり、手術の負担が大きくなったりする可能性があります。
また、噛み合わせの変化によって顎関節に影響が出るだけでなく、歯列全体のバランスが崩れることも考えられます。
歯並び・噛み合わせに問題が出る可能性
インプラントが寿命を迎えると、前述の通り脱落の可能性があります。もしも脱落が起きた場合、歯列全体のバランスが崩れてしまいかねません。
インプラントが抜けた部分をそのままにしておくと、隣接する歯が傾いたり、スペースを埋めようと移動したりすることがあります。
その結果、噛み合わせが悪くなり、食事の際に噛みにくさを感じるだけでなく、顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こすリスクも生じます。
インプラントの寿命が来たら再手術を受ける
インプラントは適切なケアを続けることで長期間使用できますが、寿命が来た場合には再手術が必要になることがあります。
再手術を検討する際は、保証制度の適用条件を確認し、適切な対応を進めるとよいでしょう。
インプラントの保証を活用できる
インプラントの治療には保証制度が設けられている場合があり、条件を満たせば再手術時に保証が適用されることがあります。
一般的に、インプラントの保証期間は5年から10年程度であり、適切なメンテナンスを継続していることが保証適用の前提となることが多いです。
保証を受けるためには、定期的な検診を欠かさず受けることが重要です。歯科医院によっては、決められた間隔でメンテナンスを受けていないと保証の対象外となることがあります。
また、患者の過失による損傷や、不適切な使用によるトラブルは保証の適用外となることが一般的です。
再手術の際には、まず保証内容を確認し、適用条件を満たしているかを歯科医院に相談してみましょう。
インプラントの寿命が縮む原因
インプラントは適切なケアを行えば長く使えますが、生活習慣やメンテナンスの不足によって寿命が短くなることがあります。
ここでは、インプラントの寿命を縮める代表的な原因について紹介します。
メンテナンスが不足している
インプラントは天然歯と同様に、丁寧なブラッシングや定期検診などの適切なメンテナンスが必要です。
例えば、ブラッシングが不十分でプラークが蓄積すると、細菌が増殖し、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
また、定期検診も必ず受けるようにしましょう。定期検診を受けずにメンテナンスを怠ると、異常の発見が遅れ、状態が悪化してからの対応になりがちです。
歯科医院でのクリーニングやメンテナンスを受けることで、インプラントの健康状態を維持し、寿命を延ばすことにつながります。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲組織が炎症を起こし、進行すると歯槽骨が吸収される疾患です。
骨の吸収が進むとインプラントの固定状態が不安定になり、脱落するリスクが高まります。
歯周病の既往症がある場合や、メンテナンス不足が続くと発症しやすくなるため、普段からの口腔ケアや定期検診が欠かせません。
毎日の適切なブラッシングに加え、歯科医院での定期的なクリーニングを心がけるなど、インプラント周囲炎を予防する習慣を取り入れましょう。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、インプラントに過剰な負担がかかり、周囲の骨やインプラントにダメージを与える原因になります。
特に注意したいのは夜間の歯ぎしりです。夜間の歯ぎしりは無意識に行われるため、気づかないうちにインプラントへ負荷がかかっている状態です。
夜間の歯ぎしりは自分で対応しにくいですが、歯ぎしり対策としてナイトガード(マウスピース)の装着がおすすめです。
歯科医院で相談できるため、夜間の歯ぎしりや食いしばりにご不安があれば、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。
喫煙習慣
タバコに含まれるニコチンやタールは血管を収縮させ、歯茎の血流を悪化させます。その結果、インプラントと骨の結合が妨げられ、術後の傷の治癒が遅れてしまう可能性があります。
また、喫煙者は非喫煙者に比べ、インプラント周囲炎のリスクが高まる傾向があります。長期間インプラントを維持するためには、禁煙をしたり、喫煙本数を減らしたりすることが望ましいでしょう。
タバコに含まれるヤニやタールは人工歯にこびりつき審美性を低下させてしまうため、見た目を重要視する人にとっても、喫煙習慣はおすすめできません。
インプラントの寿命を延ばすコツ
インプラントを長く使うためには、適切なメンテナンスや生活習慣の見直しが重要です。
ここでは、インプラントをできるだけ長持ちさせるためのポイントを紹介します。
定期メンテナンスを必ず受ける
インプラントを長く使うためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。歯科医院でのクリーニングを受けて口腔内を清潔に保ったり、噛み合わせの調整をしたりなどを心がけましょう。
インプラントは虫歯になりませんが、プラークが付着するとインプラント周囲炎のリスクが高まります。
また、快適に使い続けるためには、噛み合わせの調整も定期的に行う必要があります。
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、噛み合わせのチェックを念入りに行い、必要に応じて調整を受けたほうがよいでしょう。
格安インプラントには要注意
治療費を抑えるために格安インプラントを選ぶと、結果的にインプラントの寿命が短くなる可能性があります。主な理由として以下が代表的です。
- 費用を抑えるために品質の低い素材が使用されている可能性
- 適切な術前診断や術後ケアが不十分になる可能性
インプラント治療は高額な費用になることが多いため、費用面で頭を悩ませることは多いかもしれませんが、その際には格安インプラントを選ぶより、医療費控除利用の検討がおすすめです。
一定の条件を満たせば、治療費の一部を所得税の控除として申請できるため、費用面での負担を軽減する方法として確認してみてはいかがでしょうか。
喫煙・歯ぎしり・食いしばりの習慣を見直す
喫煙は歯茎の血流を悪化させ、歯ぎしりや食いしばりの癖はインプラントに過剰な負担をかけてしまいます。いずれの習慣も寿命が短くなる原因です。
「自分ではどうしようもないから対策できない」と思うかもしれませんが、禁煙外来や歯科医院で相談できるため、一度問い合わせしてみましょう。
自宅でもしっかりとデンタルケアをする
インプラントを長持ちさせるには、自宅での日常的な口腔ケアが欠かせません。以下のようなことを意識してケアしていきましょう。
- 適切なブラッシングをする
- デンタルフロスや歯間ブラシを使う
- フッ素配合の歯磨き粉を使用する
- 洗浄液を使う
このような習慣を身につけることで、口腔内の環境を清潔に維持し、インプラントを健康に保ちやすくなります。
まとめ
インプラントの寿命は一般的に約10~15年ですが、しっかりしたケアをしている場合、20年以上使えるケースもあります。
一方、お手入れを怠ると寿命が短くなり、さまざまなトラブルが起こり、再手術の必要性が生じるため注意が必要です。
インプラントの寿命を延ばすためには、定期メンテナンスで噛み合わせやインプラントの状態について注意したり、日頃の口腔ケアをより丁寧に行うことをおすすめします。
福山デンタルクリニックでは、インプラント治療やそれにともなう定期メンテナンスについて、詳しくご相談いただけます。気になることや疑問があれば、いつでもご相談ください。