公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」からのメール内容のご紹介
公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部より、「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」に関するメールが届きましたので、その内容をご紹介します。
事例:腎機能が低下した患者への抗菌薬の過量投与を回避
ある歯科診療所で、腎機能低下患者に常用量の抗菌薬を院外処方した際、薬局の薬剤師から疑義照会(おかしんちゃうかな?と問い合わせ)があり、過量投与を回避できた という事例が報告されました。
事例の詳細
患者の背景
- 30代の患者。
- 2年前に智歯(親知らず)の抜歯を経験。
- 今回、別の智歯の抜歯を希望して再来院。
- 診療時に 「特に治療中の疾患はない」 との申告。
ヒヤリハットの発生 ヒヤリハットとはヒヤッとしたけど、無事に終えたケースのこと。
- 埋伏智歯(親知らず)抜歯後の感染予防として、腎機能低下患者に投与量調整が必要な抗菌薬を常用量で処方。
- 院外処方のため、患者が薬局へ。
- 薬剤師が患者のお薬手帳を確認し、腎機能低下を発見。
- 処方内容について疑義照会があり、減量を決定。
- 過量投与を回避し、患者の安全を確保 できた。
ヒヤリハットの要因
🔸 既往歴の確認が不十分だった
- 「治療中の疾患がない」という患者の自己申告に依存。
- お薬手帳や検査値を確認しなかった。
🔸 若年者=腎機能正常 という思い込み
- 30代だから腎機能低下はないだろう と考えてしまった。
- 実際には、基礎疾患や薬剤の影響で若くても腎機能が低下していることがある。
改善策と歯科診療所での取り組み
✅ 処方前に腎機能を考慮する
- 歯科でよく処方する抗菌薬(アモキシシリン、セフェム系、マクロライド系など)やNSAIDsには、腎機能低下患者で用量調整が必要なものがある。
- 医薬品添付文書やガイドラインを参考にし、適切な投与量を設定する。
✅ 既往歴の聴取時に病歴だけでなく検査値も確認
- 検査値を確認 する。
- お薬手帳を活用し、腎機能に影響を与える薬剤がないかチェック。
✅ 薬剤師との連携を活かす
- 院外処方の場合、薬剤師による処方監査が行われる。
- 疑義照会があった際は、処方変更や代替薬の提案を慎重に検討する。
まとめ:処方時に「確認すべき3つのポイント」
🔹 患者の腎機能を必ず確認(eGFR、Ccr)
🔹 お薬手帳を活用し、既往歴や併用薬をチェック
🔹 薬剤師の疑義照会を重視し、適切に対応
感想 今回はヒヤリハットのケースをご紹介しました。我々もなお一層心して、臨床に臨まないといけないと思いました。また、同時に、小さなことでも教えていただきたいです。