電気的根管長測定の精度と限界
Introduction
根管治療の成功には正確な根管長の測定が不可欠です。従来、X線撮影が主な測定手段でしたが、近年では**電子根管長測定器(EAL: Electronic Apex Locator)**の発展により、より簡便で被ばくのない方法が広く用いられるようになっています。
その中でも Root ZX(J. Morita, Japan)は、高い精度と安定性を誇り、世界中の臨床現場で広く使用されています。そして現在、第3世代 Root ZXが登場し、さらなる改良が加えられています。当院にも最新の第3世代 Root ZX を導入しており、その実際の精度と限界について、in vitro 環境での評価を行いました。
本研究では、Root ZX を用いた電気的根管長測定の精度と再現性を検討し、その限界を明らかにすることを目的としました。
注:in vitro とは?
本研究はin vitro環境で行われました。「in vitro(イン・ビトロ)」とは、試験管内や人工的な環境で行う実験を指し、生体外での研究を意味します。これに対して、生体内で行う研究は「in vivo(イン・ビボ)」と呼ばれます。本研究では、抜去歯を用い、生理食塩水ゲルを歯根膜の代替物として使用することで、可能な限り実際の臨床環境に近い条件で評価を行いました。
Methodology
本研究では、生理食塩水ゲルを歯根膜の代替物として用い、抜去歯を用いた実験的比較を行いました。
測定手順
- Root ZX による測定:
- 針が「0.5」マークおよび「Apex」マークに到達した時点で根管長を記録
- 基準長(Reference Length)との比較:
- 根管の実測値を計算し、Root ZX の測定値と比較
- 統計解析:
- 測定の信頼性評価のために Student’s t-test を使用
- 測定誤差の平均値と標準偏差 を算出し、精度を評価
Results
- Root ZX の測定誤差は ±0.5 mm 以内が 84.72%
- 測定者間(inter-operator)および測定者内(intra-operator)でのばらつきは統計的に有意ではなかった(P > 0.05)
この結果から、Root ZX は高い再現性を持つことが示されました。しかし、測定誤差の範囲を考慮すると、「根尖孔(foramen)から 0.5 mm の位置を正確に測定する能力はない」 ことが明らかになりました。
Conclusions
本研究の結果から、Root ZX は根尖孔(major diameter)の位置を検出するためには有用であるものの、根尖からの距離精度には限界があることがわかりました。したがって、臨床応用においては、EAL の測定結果を X線撮影と併用することで、より正確な根管長の決定が可能と考えられます。
Clinical Implications
- Root ZX は高い信頼性を持つが、根尖孔からの距離精度には限界がある
- 臨床では、X線画像と組み合わせることで、より正確な根管長測定が可能
- 測定者による誤差は統計的に有意でないため、一定の再現性が期待できる
第3世代 Root ZX の登場により、EAL 技術はさらに進化していますが、本研究の結果を踏まえると、完全な単独使用には慎重な判断が必要です。今後、より生体に近い環境下での評価や、第3世代特有の技術的向上点の検証が求められるでしょう。
感想 この電気を使って根管長を測定するのは日本から始まっています。私が臨床に携わることには、すでに存在しており、apexの位置について議論がなされていました。根管充填の封鎖性が臨床の結果を左右する。そして、当時は使える薬剤も限られていたからです。今は、さらに進化したRoot ZX3です。駆使して臨床に励みます。
写真はROOT ZX3です。Morita社製です。
