見逃された根管が根尖病変の発生率に与える影響:横断研究の詳細
本記事では、「The Influence of Missed Canals on the Prevalence of Periapical Lesions in Endodontically Treated Teeth: A Cross-sectional Study」について詳しく解説します。
根管治療の成功に影響を与える要因として、見逃された根管(Missed Canals) が根尖病変(Periapical Lesions)の発生率にどのような影響を与えるのかを、この研究から学んでいきます。
研究の概要
この研究は、過去に根管治療を受けた歯を対象に、CBCT(コーンビームCT)スキャンを用いて、見逃された根管の有無と根尖病変の発生率を調査 したものです。
根管治療は、感染した歯髄(神経や血管を含む組織)を除去し、根管を清掃・消毒して封鎖する治療ですが、もし根管の一部が見逃されると、感染が残り、治療後に問題が生じる可能性があります。
研究方法(Methods)
- 対象データ
- 2018年1月から2018年12月までの間に、8つの異なる医療機関で撮影された1,160件のCBCTスキャン を分析
- 合計20,836本の歯(27,046本の歯根)のうち、2,305本の根管治療済みの歯を特定
- 評価方法
- 5人の専門家がCBCT画像を分析し、見逃された根管の有無と根尖病変の有無を判定
- すべての評価は独立して行われ、結果の一貫性が確保されるよう調整
研究結果のポイント
1. 見逃された根管の発見率
- CBCT解析により、多くの治療済みの歯に見逃された根管が存在していることが判明
- 特に、上顎第一大臼歯(上顎6番)のMB2(第二近心頬側根管) が最も見逃されやすいことが明らかに
2. 根尖病変との関連
- 見逃された根管がある歯では、根尖病変の発生率が高かった
- すべての根管が適切に治療された歯では、根尖病変のリスクが低かった
3. 根管治療の成功率
- 見逃された根管のある歯では、治療の成功率が低下
- CBCTやマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を活用することで、見逃しのリスクを減らせる可能性が示唆された
臨床的な意義
この研究から、「根管治療においてすべての根管を適切に発見・処置することが、成功率を向上させる鍵である」 という重要なポイントが明らかになりました。
臨床で活かすべきポイント
- CTスキャンやマイクロスコープを用いた診断の重要性
- CBCTを活用し、見逃しやすい根管の位置を事前に把握
- 解剖学的に見逃されやすい根管の知識を持つこと
- 特に上顎第一大臼歯のMB2 など、頻繁に見逃される根管を意識して治療を行う
- 再治療(リトリートメント)時には、特に見逃しの根管に注意を払う必要がある
- 過去の治療が不十分なケースでは、見逃された根管が原因となっている可能性が高い
まとめ
この研究は、根管治療の成功には「すべての根管を適切に処置すること」が不可欠である ことを明確に示しています。
特に、CTスキャンやマイクロスコープを活用することで、見逃しのリスクを減らし、成功率を向上させる ことができると考えられます。
感想 CTとマイクロスコープの意義がしめされた貴重な論文の一つです。CTは条件を満たしたら保険診療でも撮影は可能です。診断だけでも、費用にとらわれずにしたいものです。
根尖病変の絵です。
