不可逆性歯髄炎と診断された歯の根尖部の状態を評価する際、最も一般的に使用される検査はデンタルX線(PA)です。しかし、近年では歯科用CBCTを併用することで、より正確な診断が可能となることが示されています。本研究では、レントゲンとCBCTを比較し、どちらが根尖病変の検出に優れているかを検証しています。
研究の目的
本研究の目的は、
不可逆性歯髄炎と診断された歯において、レントゲン(PA)とCBCT画像を比較し、根尖病変の検出率を評価すること
です。対象には症候性・無症候性の両方の症例が含まれています。
研究の方法
130名の患者から得られた138本の歯(307根)に対し、
- デンタルX線(PA)
- 歯科用CBCT
の双方を撮影し、2名の評価者が病変の有無を判定しました。
意見が一致しない場合は協議し、最終的な評価を決定しました。
研究結果
307本の根を比較したところ、
- レントゲンで病変が確認されたのは 3.3%(10根)
- CBCTで病変が確認されたのは 13.7%(42根)
という結果でした。
これは、CBCTがレントゲンの4倍以上の病変を検出したことを意味します。
さらに重要なのは、
- レントゲンでは異常なしと判断されていた22根で、CBCTが病変を捉えていた
という点です。
特に症候性(痛みのある)歯では、CBCTにより病変が確認される割合が高く、統計的にも有意でした。
考察
歯の痛みがあるにもかかわらず、レントゲンでは異常が見つからないという状況は臨床でしばしば経験されます。本研究はその背景を明確に示しており、レントゲンだけでは初期の根尖病変を見逃す可能性が高いことを裏付けています。
CBCTは三次元的に歯や周囲組織を描出できるため、
- 骨の重なりに隠れた病変
- 舌側・頬側の病変
- 初期の小さな病変
などを捉えることが可能です。
その結果、レントゲンだけでは判断が難しい症例において、診断の精度向上に大きく寄与します。
まとめ
- CBCTはレントゲンよりも多くの根尖病変を検出できる
- 特に痛みのある歯では、CBCTの有用性が高い
- レントゲンで異常が見えなくても病変が存在する可能性がある
- 正確な診断が治療方針の決定に不可欠である
本研究は、不可逆性歯髄炎の診断におけるCBCTの重要性を強く示す内容といえます。
感想
レントゲンは数が多いほど情報量も増え診断の手助けとなります。 CTが優位なのはわかるのですがCTにも欠点があります。経年的な評価をする際に放射線の影響を考慮して、つい撮影を躊躇うことがあります。 また、金属や詰め物などがはいっているとハレーション(影)となって、読影することが困難になる場合もあります。 どちらも長所・短所がありますので全部撮影するのが正解と思っています。また逆に噛み合わせが悪い方などのフェネストレーションはCTでないとわからないこともあります。
やはり、全部撮影するのが正解ですね。