水酸化カルシウムを長期使用すると歯根破折のリスクが高まる?
こんにちは。
根管治療の途中で使う薬剤について説明します。根管治療中、根管の中には通常カルシウム製剤が入ります。いろんな形で各メーカーから販売されています。糊状のものや粘稠度の低いお水みたいなもの、パウダーもあります。水酸化カルシウム、シリコンオイル、ヨード、レントゲンに映るための造影剤も入っていることが多いです。そこで、昔からある論文をご紹介したいと思います。Long-term calcium hydroxide as a root canal dressing may increase risk of root fracture 2002年の論文です。日本語に訳すと「水酸化カルシウムを長期使用すると歯根破折のリスクが高まる?」といったところでしょうか?
水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)は、根管治療における貼薬材として広く使用されています。その高いアルカリ性により、殺菌作用や硬組織の形成促進が期待できるため、多くの歯科医師が日常的に活用しています。
しかし、近年の研究では、長期間にわたる使用が歯根破折のリスクを高める可能性があることが示唆されています。
長期使用による象牙質への影響
水酸化カルシウムが根管内に1か月以上留置された場合、象牙質の構造的な強度が低下する傾向が見られます。具体的には以下のような変化が報告されています。
- 象牙質中のコラーゲン構造の劣化
- 屈曲強度および破折抵抗性の低下
- 歯質の脆弱化
これらの変化は、特に未完成歯や薄い歯根壁を持つ歯において、歯根破折のリスクを高める要因となります。
臨床での対策
- 水酸化カルシウムの貼薬は、原則として1〜4週間以内に留める。
- 長期間にわたる貼薬が必要な症例では、MTA(鉱物性三酸化物セメント)やバイオアクティブ材料の使用を検討する。
- 長期間貼薬を行った歯は、治療後も継続的な観察と評価を行う。
まとめ
水酸化カルシウムは非常に有用な材料ですが、その使用期間には十分な注意が必要です。貼薬材の選択と使用期間を症例ごとに見直すことで、歯の長期的な保存に貢献できます。

感想
貼薬後は約7日間で細菌の減少とのこった歯髄に効果があるとされています。ですから約1週間ごとの来院が基本となります。長期の治療になると破折リスクが高まるのはもちろんなのですが、仮歯の端から細菌が入ってくるという報告も多々上がっています。やはり1週間ごとの来院が望ましいです。