「Modern Endodontic Surgery Concepts and Practice: A Review」についてのブログ記事
1. はじめに
マイクロスコープが歯科治療に導入され始めた頃、まだ日本ではそれほど普及していませんでした。この記事で取り上げる**「Modern Endodontic Surgery Concepts and Practice: A Review」**が発表されたのは2006年。当時、マイクロスコープは歯内療法(エンドドンティクス)において画期的なツールとして注目されつつありましたが、その有効性についてはまだ十分に理解されていない時期でした。
歯内療法におけるマイクロスコープの活用は、大きく外科処置と非外科処置の2つの分野で発展してきました。本論文はそのうちの**外科処置(エンドドンティックサージェリー)**に焦点を当てたものです。
今回は、この論文の内容を振り返りながら、マイクロスコープがエンドドンティックサージェリーに与えた影響について考えてみます。
2. 論文の概要
このレビュー論文では、近代的なエンドドンティックサージェリーの概念と実践について詳しく解説されています。特に、以下のポイントが重要です。
- マイクロスコープの導入による術野の向上
- ルーペや肉眼では見えなかった微細な病変や根尖部の構造を詳細に確認可能に。
- 外科処置の正確性が向上し、治療結果の予測性が高まった。
- 超音波器具の活用
- 伝統的なドリルではなく、超音波を利用することで、より精密で低侵襲な処置が可能に。
- 骨の削除量を最小限に抑えつつ、感染した根尖部を効果的に除去できるようになった。
- 新しいバイオマテリアルの使用
- MTA(ミネラルトリオキサイドアグリゲート)などの材料が登場し、根尖充填の成功率が向上。
- 生体親和性の高い材料により、組織の治癒促進が期待されるようになった。
- 成功率の向上
- マイクロスコープと新技術の組み合わせにより、エンドドンティックサージェリーの成功率が向上したことが報告されている。
3. マイクロスコープがもたらした変化
この論文が発表された2006年当時、マイクロスコープを使用したエンドドンティックサージェリーはまだ一般的ではなく、一部の先進的な歯科医によって取り入れられていました。しかし、その後の臨床の現場では、次のような変化が見られるようになりました。
- より低侵襲な手術の実現
- マイクロスコープの精密な視認性により、最小限の切開で処置が可能に。
- これにより、術後の腫れや痛みの軽減につながった。
- 診断の精度向上
- 微細な根尖病変、歯根破折の早期発見が可能に。
- 適切な治療方針の決定がしやすくなった。
- 長期的な成功率の向上
- MTAやバイオセラミック系材料の登場と相まって、外科処置の予後が大幅に改善。
- 以前は抜歯が選択されていたケースでも、保存治療の選択肢が増えた。
4. 現代のエンドドンティックサージェリーとの比較
現在では、マイクロスコープを用いた外科的歯内療法は標準的な手法として確立されています。さらに、**CBCT(コーンビームCT)**を活用することで、術前の診断精度が飛躍的に向上し、より計画的な治療が可能になっています。
また、治療材料の進化も続いており、MTAに加えてバイオセラミック系の材料が主流になりつつあります。これらの新技術と組み合わせることで、外科的歯内療法の成功率はますます高まっています。
5. まとめ
「Modern Endodontic Surgery Concepts and Practice: A Review」は、マイクロスコープが歯内療法の外科処置においてどのように活用され始めたかを示す貴重な論文です。当時はまだ導入期だったものの、この技術はその後急速に普及し、現代のエンドドンティックサージェリーの基盤を築きました。
感想
現在の歯内療法を語る上でこの論文の価値は大きいです。外科処置の圧倒的な成功率を目の当たりにし、多くの専門家は外科にたよってしまう傾向にあるのも事実です。適応症を守って、できるだけ外科に頼らない姿勢黙時かなとは思っています。
