今回ご紹介するのは、2008年に行った再治療のケースです。現在2025年ですので、今から17年前の症例ということになります。
このケースは、私が顕微鏡を学ぶ前のもので、「以前に入れた被せ物が古くなったので、やり直したい」という患者さんのご希望から治療が始まりました。
当時の私は専門医でもなく、九州で学んだ古典的な根管治療こそが最良だと信じていました。今になって振り返ると、本当に“井の中の蛙”だったと感じます。もちろん、ニッケルチタンファイルも顕微鏡(マイクロスコープ)も使用しておらず、完全に経験と感覚に頼った治療でした。
また、小さなデンタルX線写真(デンタルX-ray)はすべてアナログで記録していたため、現在のようにコンピュータへ取り込むことができません。そのため、画像としてお見せできるのはパノラマレントゲンのみとなります。比較しづらい点はどうかご容赦ください。
パノラマレントゲン(
抜粋)を見ると、前歯4本がすでに処置されており、白く写る部分には金属のコア(土台)が入っていました。歯根方向に薬剤が充填されているものもあれば、そうでないものもあり、黒く写る部分は膿がたまっている箇所と考えられます。
17年後の現在

最近撮影したレントゲンでは、根尖(歯の根の先)に病変は見られません。コア部分のフィットにやや甘さが見られるところもありますが、根管充填された4本の歯すべてに膿は確認されません。
むしろ、根尖が再生し、わずかに延びているようにも見えるほどです。自分自身で「これは当時、気合の入った治療をしていたな」と感じるくらいです。
被せ物は当時のセラミック技術を使ったもので、適合もよく、隙間なくセットできていたため、再感染を防ぐ要因にもなっていると思われます。
顕微鏡もマイクロスコープも、そしてMTAセメントもなかった時代の再治療は、本当に難しいものでした。それでも、術者の気持ちと、患者さんの粘り強い協力によって、このような結果につながったのだと感じています。
治療期間と費用
治療期間:約3ヶ月
費用約40万円(※当時の料金です。現在とは異なりますのでご理解ください)